負け犬の遠吠え 酒井順子著

私のお客様は30台の方が最も多いのです。ただ独身の方もいれば結婚なさっている方もおり、どちらかに偏ってはいないし、むしろ精神的な問題やストレスを抱えていらっしゃるのは勝ち犬組みの方たちのほうが多いです。私はこの本を読むまで「負け犬」と言う概念自体持っていなかったのです。

面白く読ませていただきましたし、一番勉強になったのはこの世代の独身女性が「負け犬」という気持ちを陰に陽に多かれ少なかれ持っているのだなぁと言う点は非常に参考になりましたし、カウンセリングでも役に立ちそうです。

私はこれを読んで負け犬たちに言いたいことが一つだけあります。負け犬たちはおそらく社会に進出していってそれなりにやってきたわけですが、多分その過程で日本のオヤジ的というか男性的というかマスコミ的というかそういう価値観を陰に陽に身に付けてしまったと思います。それには仕事に対する達成感とか、プライドとか、家族よりも仕事を優先するとか、日経新聞を読むとか、政治的な手腕とか、社会問題とか、色々あると思います。日本は一種のオヤジ社会です。オヤジの価値観で政治が動き、制度が決められ、社会の優劣、社会の階級が決まってゆきます。負け犬たちはオヤジ社会で堂々と生きてゆくために陰に陽にそういった価値観を身に付けてゆきます。この中で最大の問題は人生の価値観とそれから他人に対するレッテル付けでしょう。

特に一番の問題はオスの負け犬に対するレッテル付けです。もちろんこれはある面で著者が本を面白おかしくするために行ったことですが、ここに端的に負け犬たちの問題点が現れています。オタ夫、ダレ夫、ジョヒ夫、ダメ夫、ブス夫という具合にオスの負け犬を分類して、自分のあったオスの負け犬がどのタイプに属するか観察すると言ったことでは到底良い相手になどめぐり合えるわけは無いです。相手をその様に見ると言うことはとりもなおさず自分の事を相手にも分類分けさせるという事に他ならないのです。相手をその様に見ることはそのまま、オスの負け犬が自分をどいう負け犬かをレッテル付けさせるように仕向けることに他なりません。

私はこの問題に関して最近婚約した出川カップルをどうしても思い出します。「最もだかれたくない男性」として認知されている出川哲郎氏ですが、その彼の良い点を認識してあげたレースクイーンの阿部瑠理子さんはまさに負け犬たちが見習うべきところがあるのではないでしょうか?結局のところ男性を社会的地位や、外見や、マスコミ的価値観で見て(つまりオヤジ的価値観によって見て)、「私はああいう人とは・・・」「もう少し良い人がいるのでは・・・」といった判断で男性を見てきたのが負け犬になった原因の一つではないでしょうか。(もちろんこのことは男女ひっくり返して、オス負け犬にも当てはまることです)

もう一ついえることは、負け犬たちはやはり自分の価値観に閉じこもりがちだと言うことです。負け犬同士で傷を舐めあうという感じが多くなってしまって、行動範囲や行動環境や人間関係が狭くなってしまっていること自体がさらに負け犬状況を悪くしていると言えます。それはそもそもなぜかというと、もちろん「負け犬」として自分自身にレッテルを貼ってしまっているのが一つ、そして長年自分が閉じこもってしまっている価値観が非常に狭いものであることに気が付かないことが一つです。

私自身はこの本を読んである意味よくない影響を受けました。それは著者がやってしまっているように負け犬世代の女性の外見・服装・雰囲気などから判断して、その人の薬指にリングがあるかどうかを街中などで試しております。これが案外面白いし、しかも案外と著者の観察の通りに当たる確率が高いです。しかし、こうやって人を判断することは非常におそろし事ですし、ほどほどにしないとと自分に言い聞かせているこのごろです。レッテルを貼ってしまうことは本当に恐ろしいことですが、この世代の独身女性の感じていることに関して、新しい視点が出来たのはとても収穫でした。

 

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