6×4.5のフィルムスキャン

2001/12/17

デジカメの解像度に不満を持って、また銀塩の世界を覗いてみたくなった私は中判銀塩をGA645Ziではじめました。撮影したポジフィルムをビューワーに乗せると、そこに映し出されるすばらしい階調と圧倒的な描写は期待通りのものでした。ルンルン気分で六切りのダイレクトプリントを頼んで、受け取って見た瞬間「何だ、これは!?$#$」。今でもその憮然とした気持ちは忘れません。そこにはボケボケとした描写で階調も少なくなった「銀塩プリント」というものが、ペロと横たわっているではありませんか。

さらに家に帰って高倍率のルーペでポジ原画とダイレクトプリントとを比較するとその差は歴然。「これじゃPM770Cの方がまだましだよなぁ・・・」今まで銀塩写真やってる人はこんなボケボケプリントで、よく我慢しているなぁっと思ってしまいました。その後、様々なところで生の印画紙画像を見ても、どうも印画紙の解像度というのは最新のインクジェットプリンターとよりも悪い、と言うことが徐々に分かってきました。さらに印画紙の階調も、ダイレクトプリントをした場合はコントラストが非常に上がると言うことでした。(これはベルビアを好んで多用するような風景写真をやっている場合は好ましい傾向のようです。)つまり中判中判と言っても、半紙や全紙にプリントしない限りその良さが十分発揮できないと言うのが実は銀塩写真の世界だったのです。(逆に言えばインクジェットプリンターの進化がいかにすごいかと言うことかもしれませんが。)

銀塩フィルムに閉じこめられた圧倒的な描写と階調をいかにプリントするか。これが私の問題でした。インクジェットプリンターはそれこそ日進月歩。個人でもA3ノビまで非常に廉価にしかも美しくプリントできます。やはり出力としてこれを使わない手はない。今満足できなくても、数年すればもっと良くなる。では、いかに中判フィルムをデジダイズするか、と問題に集約されました。これまでに3社のフィルムスキャンサービスを試してみて、100%満足は出来ませんがそれなりの結果が出ましたのでここにレポートしたいと思います。(物理的なフィルムスキャナーの比較でなく、サービスの比較です。)もちろん究極にはコダックのプロPhotoCDがあるのですが、とても個人で経常的に利用できるコストではありません。

◎サンプル1

朝日をバックに写した木です。フジGA645Zi, プロビア100です。この画像は非常に細かい枝が写っているので解像度のテストになり、背景の空は広域グラジュエーションのテストになります。以下は赤い部分の拡大です。

 

   愛機QV-2000UXによるコマ全体を接写した画像。これが結構いけるので驚きました。1600x1200画素、約700dpi相当です。(無料!)
  720dpi (H社、機種不明)。これじゃQVによる接写と大して変わらない。最初のスキャンだったのでがっかり。(コマ200円)
  O社によるミノルタDimage Scan Multi (F-3000)を使った1128dpiのスキャンで、全体は2496x1856画素。一時このスキャナーの購入を真剣に考えたのだが、この結果を見て止めた。グラジュエーションはかなり自然な再現を示しているが、解像度は高倍率のルーペの情報とはるかにかけ離れている。このO社のスキャンサービスはゴミ・ほこりが多く、閉口した。A4にプリントする程度なら許容範囲かもしれない。(コマ300円)
  S社による2207dpiのスキャンで4814x3543画素。うーん、さすがに高解像度。プロビア100の粒子の見えるルーペで比較しているが、ポジ原画の情報をほぼ再現している。残念ながらJPGの圧縮ノイズの様なものが激しく見られ、階調の再現性はミノルタMultiに劣る。この会社の画像処理の問題かもしれない。ゴミホコリは少なく良好。(コマ333円)

 

◎サンプル2

フジGA645Zi, プロビア100。グラジュエーションを気にする必要のないサンプル。標準の考え方より全体にアンダーでプリントも難しい部類の絵。以下は赤い部分の拡大です。

 

  QV-2000UXによるコマ全体を接写した画像。1600x1200画素、約700dpi相当です。(無料!)
  720dpi (H社、機種不明)。(コマ200円)QVの接写よりは良い。
  富士フイルム・RPプリント六切りの相当部分をQV-2000UXで接写。(接写ですがプリントのこの部分は再現している)結局プリントの解像度は720dpiといい勝負じゃないかなぁ。しかも明部・暗部ともに飛んでしまっている。(1,600円なり!)
  O社によるミノルタDimage Scan Multi (F-3000)を使った1128dpiのスキャンで、全体は2496x1856画素。(コマ300円)
  S社による2207dpiのスキャンで4814x3543画素。うーん、圧倒的に情報量が多い。グラジュエーションを気にする必要ないので、すばらしいでき。(コマ333円)

 注:なおミノルタの名誉のために言って置くが、このスキャンナー対決の第2段で明らかになるように正しく使えばDimage-Scan-Multiは上の画像の例で示したよりは良い解像度でスキャンできる。特に連続的な階調はMultiのスキャンの方が勝っている。

◎サンプル3

フジGA645Zi, プロビア100。夕方のすばらしいグラジュエーションの画像。以下は赤い部分の拡大です。(左の画像はQV-2000UXでポジを接写)
S社のスキャンが破綻している画像。全体にJPEGノイズが白く乗ってしまっている。また下のように夕焼けの赤み成分も非常にに弱くなってしまって、全く使用不可の結果となった。

 

◎まとめ

6×4.5の情報を十分に引き出すためには最低でも2200dpi程度のスキャニングが必要。これはMinoltaのMultilでは十分ではない。印画紙の解像度は720dpi程度であると思われ、現在の安価なインクジェットプリンターと拮抗している。S社のスキャニングサービスは広いグラジュエーションがない場合は満足のゆく結果を出してくれる。

最後に。(プリントに関してのところにも書きましたが) この2200dpiで私のすでに古くなってしまったPM770CからA4へプリントした画像は「すごい」の一言です。自分のこのプリンターからこんな画像が出てくるなんて全然知りませんでした。

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